|
お酒が好きで、ちょっぴりエッチで、博学多識。ぱりっとした紳士ぶりの一方、ちょっぴりやんちゃな一面も。周りに漂うのは、嫌味のないオシャレモノ(*2)の雰囲気・・・『洋酒天国』を人間にたとえると、こんな素敵なおじさま(なぜかおじさま)が浮かび上がってきます。
『洋酒天国』が発行されたのは、昭和31年(1956年)。発行元は、寿屋(現サントリー)の宣伝部。編集長はのちの芥川賞作家の開高健氏で、イラストレーターはご存知アンクル・トリスの生みの親・柳原良平氏でした。この黄金コンビが関わっていたというだけでもすごいのに、そこに直木賞作家となる山口瞳氏も加わり、あぁ、もう、向かうところ敵なし。
もちろん当時でもその人気ぶりは大変だったらしく、『洋天』配布先のサントリーバー・トリスバーでも品切れ続出で、常連さんしかもらえなかったとか。また、開高さんの娘さん・開高道子さん(*3)も『戦後の広告界にこのPR誌なるものの概念をはじめて、そしてほとんど決定的に定着させたのは、父が創った「洋酒天国」なんだそうです』(『風説食べる人たち』)といっています。
洗練されたユーモアーとたっぷりの遊び心、稲垣足穂、春山行夫、田村隆一、薩摩治郎八、遠藤周作、吉行淳之介、亀倉雄策、河野鷹思などの豪華な執筆陣で彩られた紙面は、今読んでもその魅力に酔っぱらうこと間違いなしの、格好良さ(*4)。
今回の特集では、この素晴らしき『洋酒天国』に敬意を表し、カンパイ!洋酒天国ということでお届致します。洋酒党のかたも、そうでないかたも、洋天に漂う粋な心をくいっと一杯、ぜひどうぞ(*5)。
*注1・・・「夜の岩波文庫」とは初代編集長・開高健氏の命名。
*注2・・・そういえば、植草甚一氏が推理小説雑誌『マンハント』で「夜はおシャレ物」って題の連載を持ってましたねぇ(関係なくてすみません)
*注3・・・道子さんのお母さまで開高氏の奥さまは詩人・エッセイストの牧羊子さん。寿屋に入社したのは羊子さんが先で、その後、開高氏と交代。おいしいもの好きの開高氏のせいか、羊子さん道子さんともに、お料理エッセイでも有名です。
*注4・・・『洋天』の題字は、大阪出身のグラフィック・デザイナー早川良雄さんであります!
*注5・・・もっと詳しく知りたい!という方はミニコミコーナーの『sumus9号・あまカラ洋酒天国』がおすすめです。『洋天』総目次までついてます。
|